免疫老化とは
免疫とは、体の健康を維持するために異物を排除し、体内のバランスを整えるシステムです。
しかし、加齢とともに免疫機能は低下し、この現象を「免疫老化」と呼びます。免疫老化が進行すると、病気の回復が遅くなったり、抗生物質の効果が弱まったりするなど、さまざまな健康上の問題が発生します。
では、免疫老化が進むと具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。
免疫老化による影響
異物を認識する力の低下
免疫システムは、体内に侵入した細菌やウイルスといった異物を識別し、排除することで病気を防ぎます。しかし、免疫老化が進むと、異物を「非自己」と認識する能力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
獲得免疫の機能低下
免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があり、加齢によって特に獲得免疫の機能が衰えることが指摘されています。獲得免疫の中心的な役割を担うT細胞は、胸腺という器官で作られますが、加齢により胸腺が縮小すると、新しいT細胞の供給が減少します。また、T細胞の分裂・増殖回数には限りがあり、老化によってその能力が低下することで、免疫力の低下につながります。
炎症反応の制御低下
免疫老化が進むと、体内の炎症を抑制する機能が衰え、慢性的な炎症が続きやすくなります。その結果、病気の重症化リスクが高まり、関節リウマチやがんなどの発症につながる可能性もあります。また、ワクチンや抗生物質の効果が減少することも指摘されています。
免疫老化の主な原因
加齢
加齢により免疫細胞の働きが弱まり、特に獲得免疫の機能が低下することが知られています。一般的に、20代をピークに免疫力は低下し、40代には半分程度になるとも言われています。加齢に伴い胸腺の機能が低下し、T細胞の質や割合が変化することも、免疫老化の一因とされています。
がんの影響
免疫老化とがんには相互関係があると考えられています。がんを発症すると、免疫機能の低下が加速されることが研究で明らかになっています。特に白血病の発症時には、PD-1陽性Tリンパ球という細胞が急増し、免疫力が大幅に低下することが確認されています。そのため、若い人でもがんを発症すると免疫老化が進行する可能性があるとされています。
免疫老化を防ぐための生活習慣
免疫老化は完全に防ぐことはできませんが、適切な生活習慣を取り入れることで進行を遅らせることが可能です。
① 摂取カロリーを抑え、栄養バランスを意識する
食べ過ぎは腸内環境の悪化を招き、免疫力の低下を引き起こします。食事量を「腹八分目」に抑えつつ、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
② ビタミンC・Eを積極的に摂取する
ビタミンCはウイルス感染を抑制するインターフェロンの生成を促し、活性酸素を除去する働きがあります。ビタミンEには抗酸化作用があり、免疫機能をサポートします。
ビタミンCを多く含む食材
- パプリカ
- ブロッコリー
- アセロラ
- キウイ
- いちご
ビタミンEを多く含む食材
- アーモンド
- うなぎ
- 鮭
- かぼちゃ
- 豆乳
③ 笑う習慣を持つ
ストレスは血行を悪化させ、免疫細胞の働きを低下させる要因となります。笑うことで副交感神経が活性化され、血流が改善し、免疫細胞の働きが向上すると言われています。作り笑いでも効果があるため、積極的に笑う機会を増やしましょう。
④ 質の高い睡眠を確保する
睡眠不足は免疫細胞の減少を招きます。寝る前のアルコールやカフェインを控え、6〜8時間の質の良い睡眠を確保することが重要です。
⑤ 適度な運動を取り入れる
運動は体温を上昇させ、血流を促進し、免疫細胞の活性化につながります。過度な運動は逆効果となるため、軽いウォーキングやストレッチを習慣化すると良いでしょう。
まとめ
免疫老化は避けられない現象ですが、生活習慣を改善することで進行を遅らせることができます。バランスの取れた食事、適度な運動、良質な睡眠、ストレス管理を意識することで、免疫機能を維持し、健康的な生活を送りましょう。